第2話 : 『黒い霧』

【体験者:@管理人】 2003/10/04 公開作品


この体験は今から4年前、1999年の晩秋に起こった出来事です。

私は、千葉県印旛村の友人宅で仲間3人と共に鍋をやる事になりました。
彼の家は大通りに面したアパートにあります。

アパートに来客用の駐車場がない事や路上駐車しにくい事などから、
私たちは近くの100円パーキングに私の車を駐車して、歩道橋を渡って彼のアパートへ向かいました。

一通りドンチャカ騒いで楽しい時間を過ごし、ふと時計を見ると深夜0時を少し回った頃でした。

友人3人は泊まり、私は翌日の事もあったので、仲間をアパートに残し1人先に帰路に就いたのです。

今まで何度か通った事のある歩道橋、何て事もないただの歩道橋です。
私は階段を登り始めました。
車の往来も普通にあり、特に変わった様子などありません。

上まで渡りきり、反対側に向かってトコトコと歩き始めた、その時です!

私の目の前に黒い霧のようなモノがモワッと現れたんです。

『ん?何だ?』

まだ車の往来がある時間だったので、私はトラックの廃ガスか何かが上がってきたんだろうと思いました。

その霧は一瞬にして私の脇を通り過ぎました。

しかし…。

風が吹いているので、私の脇を通り過ぎた後は、はるか後方に流れ去っていくはずなのに、
私の感覚として、その霧は私の背後、背中にまとわりつくようにして一緒についてきたんです!

どう説明したら良いのでしょうか…。

霧が人の形のようになって、私が歩いているすぐ後ろをビッタリ1センチと間を置かずに付いてくる感覚です。
私はまるで、背中から羽交い絞めにされながら歩いているような…。
この時、車の往来はありましたし、そんな不気味な状況でも何でもないんです。
なのに、確かに背後に人の気配、それも私と1センチと間をおかないような距離で付いてくる気配があるんです。

何かを見た訳ではないのですが、私は気持ち悪さを感じて反対側の階段へ急ぎました。

その時です!

カツン。

『…?』

カツン、カツン。

『誰かがあがって来てるのかな…』

カツン、カツン、カツン。

『…』

『!?』

反対側の階段から現れたのは、普通の中年の男性でした。

そちらに意識を奪われていたうちに、いつの間にか霧の気配は背後から消えていました。
生身の人間に出会った事で私は何か安心したような気持ちになり、再び歩みを進めました。

その男性との距離が10メートルほどに近づいてきました。

ひしゃげたスーツを着た、サラリーマン風の中年男性でした。
心なしか、顔色はドス黒く、下を向いているように見えました。
私はその男性とすれ違いました。

その男性は私とすれ違う時に、下を向いたまま目だけを動かして私の方をチラッと見たんです。
目が合った瞬間、何故だか解りませんが、私はゾッとするような悪寒を覚えました。

『何だあの人…』

そうこう思っているうちに私は反対側の階段口に着きました。
先ほどの黒い霧が付いてくる感覚の正体が何なのかが気になっていましたので、
私は階段を降り始めたと同時に今まで歩いてきた方向を横目で見てみたんです。
先ほどの変な男性の事も気になっていましたし…。

しかし…!

その男性は影も形もないんです!

どう考えても、そんなはずはないんです。

私がその男性とすれ違ったのは、もう少しで階段口という地点。
ましてや、すれ違った場所は狭い歩道橋の上ですから、身を隠す場所なんて有り得ません。

『…』

呆然としていた私の耳元に、生暖かい息のようなモノが吹きかかりました…。

『!!』

私はギョッとして立ちすくんでしまいました。

すると…。

『あぁうぅ…』

表現は悪いですが、老人のうめき声のような声が、私の耳元で聞こえたんです!
まるで、誰かが私を後ろから抱擁しながらうめいているように…。

脳裏に、あの中年サラリーマン風の男性の顔が思い浮かびました。

私は正気を保つのが精一杯で、激しい悪寒を感じながら、何とか車に戻り大急ぎで帰宅しました。
運転中、何故だかバックミラーが気になり続け、私は後ろを見ないようにしながら運転し帰宅しました。

まとわりついた黒い霧、サラリーマン風の男性…。

あの時の体験は、いったい何だったんでしょうか…。