第7話 : 『事故車』

【体験者:@管理人】 2004/05/10 公開作品


この話は、とある心霊スポットへ取材に出掛けた帰りに起こった出来事です。

その日の取材は私の単独取材で、とある峠を目指す事にしました。
夕方に部屋を出発し、夜には現場に着いたのです。

いつも通りに取材をこなし、デジカメの仕上がり具合をチェックして問題ない事を確認した私は帰路へ着きました。

そこは峠が複雑に入り組んだ場所で、比較的、死亡事故も多発している所。
雨上がりの道中だった事もあり、私はハンドル操作に気をつけながら運転をしていました。

どれくらい進んだ頃だったでしょうか…。

私は、後ろから着いてくる一台の車の存在に気がつきました。

辺りは街頭もまばらな山道です。
その暗さもあって、どのような人が乗っているのかまでは解りませんでした。

『走り屋の人だったら嫌だな…』

そう思った私は、退避所に着いたら先に行かそうと考えました。

程なくして、路肩に適度なスペースを見つけた私は、ハザードをたいて車をそのスペースに入れました。
そのまま様子を伺っていると、後ろの車はゆっくりとしたスピードで私の車の横を通過して行ったのです。

運転席に中年の男、助手席には若い女が乗っていました。

その車は、私の車の横を通過すると途端にスローペースになり、今度は私が追走する形となりました。
煽っているように思われるのも嫌なので、私はその車のスピードに合わせゆっくりと走りました。

そのまま何キロか走って、とある橋に差し掛かった時です…。

突然、その車の室内灯がついたのです。

と同時に、助手席の若い女が私の方を振り向いたのです。

室内に明かりが照らされていた為もあるのでしょう。
その女の顔を私はハッキリと見ました。

瞬間、何故だかは解りませんが、私は例えようのないような寒気を感じました。

『何…?』

その女は、顔だけ後ろに向けて、まるで能面のような表情で私の方をジッと見ているのです。

『何だ、あいつ…』

予感…そう言えば適切でしょうか。

このまま一緒に走り続けていると何か嫌な事が起こりそうな気がした私は、車を停め、やり過ごす事にしました。

その車は走り去って行きました。

私は停車したままで5分ほど時間を潰し、再び車を走らせる事にしたのです。
幾らかの険しいカーブを切り山道を進む私の目に、とあるモノが飛び込んできました。

それは…。

カーブの先の草むらに放置されたように佇んでいる廃車でした。

車輪は脱輪し、窓には無残にも無数の傷跡がついているボロボロの廃車です。
明らかに事故車と解るような惨状なんです。

『これはひどいな…』

私はヘッドライトを照らしたまま、車から降りてよく見てみる事にしました。

しかし、よく見ていくうちに、私は自分の体が震えだすのを感じました。

そうなんです。

その車は、さっき私と一緒に走っていた車に間違いないのです…。

運転席に中年の男、助手席に若い女が乗っていたあの車に間違いないのです…。
同じ車種、同じ色、うろ覚えですが、ナンバーの登録県まで同じなんです…。
でも、もう何年も放置されたままのような激しい痛み具合で佇んでいて…。

本当にただの偶然なのかも知れません。

でも、そんな偶然ってあるのでしょうか?

目撃する前後に起こった出来事といい、私が感じた寒気といい、あの場所で何かがあったとしか思えません。

振り向いた女の顔を見た時の悪寒…ゾッとした感覚…。

もしかしたら、あのカップルは、私を連れて行こうとしてたのではないか…。
ふと、そう思い返す事があります。

深夜の峠道での出来事。

私は今でも、あれが不思議な体験なのか、それともただの偶然なのか、自分でも解らないままでいるのです…。